入れ歯が出来上がるまでの過程をご説明します。
模型に分離剤を塗布するとか、細かいところは省略して説明しています。
きちんと書くと1冊の本になってしまうのでかなり省略したのですが、写真の数が100枚近くなりました。
国家資格を有する歯科技工士が作成しています。

【診療室】　おおよその歯型をとります。

【技工室】石こうを注ぎます。

歯型から模型を外します。

外したところ

模型をトリマーでトリミングします。

これからかみ合わせをとるための装置を作成します。

模型にワセリンを塗布し、オストロン（写真のピンクの部分。樹脂です）を練って基礎床とします。

ロウを盛ります。
咬合床の完成です。
形態が不適切だと、診療室で苦労します。
これを使用して、上顎と下顎の位置関係を診療室で記録します。

【診療室】　かみ合わせを採ります。

【技工室】

診療室で採ったかみ合わせの状態で、
咬合器に模型を装着します。

咬合器とは、口腔内の顎の動きを近似的に再現する器具です。

人工歯を排列します。
この次は診療室で、歯の並びをチェックします。
素人がやると、真ん中がずれていたり、歯が斜めに並んだり、不自然な歯並びになります。

【診療室】　前歯が奇麗に並んでいるか確認します。
その後、精密な型どりをします。（いろいろな方法があります）

【技工室】

精密な型採りに対し、石こうを注いだ後、トリミングをします。

咬合器に装着しました。

シリコンで前歯部の排列の状態を記録しておきます。

サーベイヤーという器具で、義歯の着脱方向を検討します。
部分入れ歯の場合、ばねがありますが、歯のアンダーカットの部分にばねの先が入らないとパチッと入れ歯が口腔内に入りません。

金属部分の設計を模型に書き込みます。
ばねは入れ歯の出来を左右する重要部分で、設計は専門知識を要します。

緩衝スペースを設けます。金属の部分は樹脂のなかに入り込ませるので直接歯茎（模型）の上に置きません。

ロストワックス法でばねの部分を作成します。
ワックスアップしやすいようにブロックアウトしています。

内面の様子。
ブロックアウトしています。

ワックスアップ
この蝋型が金属に置き換わります。

ゴム型に蝋型を立てています。
一度にいろいろな部品を鋳造するので、ごちゃごちゃに見えます。

蝋型を埋没材で埋めます。
埋没材が固まったら、上のゴム枠を外します。

ファーネス（電気炉）に入れて、ロウを蒸発させます。
鋳型ができました。

入れ歯の金属の部分は、保険の入れ歯であれば、ほとんどの場合、コバルトクロム合金です。

キャスコムという真空鋳造する機械。かなり高価です。
小型の誘導炉で金属を融解し、真空状態で鋳込み精度を高めます。
コバルトクロムはかなり高温でないと溶けません。

鋳造後、埋没材から出したところ。

サンドブラスターで埋没剤を除去します。

除去後。

研磨します。
コバルトクロムは硬いので適切な材料で研磨する必要があります。
研磨する機械はトルクが強く、振動も少ない高品質なもので、ホームセンターでは売っていません。

スプルーといって、蝋型に金属が流れる管を設定しますが、これに流れた金属は余分なので除去します。

バーを研磨します。

入れ歯を歯に留めるばねを研磨します。

段階を追って研磨していきます。

これはカーボランダムで研磨しているところです。

試し入れします。

バーを研磨

ばね（クラスプといいます）を研磨

最終研磨は粘土のようなものをつけてバフで研磨します。

バフで研磨

メタル関係の仕事が終わった後は、樹脂を填入する仕事に移ります。

人工歯のみが完成義歯に残り、他はレジン（樹脂）に置き換わります。

人工歯以外は除去して、シリコンに記録された前歯の位置関係を再現します。

模型に直接ワックスを持っていきます。

ワックスは後にレジンに置き換わります。

下も奥歯に人工歯を並べます。

かみ合わせの状態を見ながら、人工歯を並べていきます。

赤い紙でかみ合わせの状態をチェックしています。

青い紙でかみ合わせをチェックしています。
まっすぐに咬んだ場合と、横にぎりぎり咬んだ場合とで、調整を分けます。
どこをどう削るか、かみ合わせの調整については専門知識を要します。

人工歯がすべて並んだところ。

入れ歯の完成型となるようにワックスを盛ります。
適切な形態を付与するには専門知識が必要です。

正面から見たところ。

次のステップで作業しやすいように模型上の不要な歯を落とします。

フラスコという金属の枠に石こうで埋没します。

ふたをします。

煮て、ワックスを溶かします。

フラスコを開けたのち、お湯をながしてワックスを流し去ります。

分離剤を熱いうちに塗ります。石こうとレジンがくっついたら除去が困難になるからです。
もちろん、人工歯に分離剤を塗ってはいけません。

ワックスを流すときに、人工歯まで流れてしまうことがありますが、人工歯の欠落がないことを確認します。

熱で固まる樹脂を填入します。
最初は粉と液とに分かれていますが、混ぜると固まり始めます。
熱を加えると固まる樹脂を使用します。

模型とくっつかないようにシートを置きます。

加圧します。

適切な圧力を加えます。

はみ出たレジンを除去します。

加圧は何度か繰り返します。そののち、ふたをしてねじ止めします。

お湯で加熱します。加熱の方法は決まっていて、不適切に加熱してもうまくいきません。

加熱がすんだら外します。

フラスコから出したら、割り出します。

慎重に割り出します。

下手にやると、入れ歯を割ってしまいます。

割り出し完了。少し石こうが残ります。

石こうを薬剤で溶かします。

バリを除きます。

細かく形態修正、バリ取りをします。

レジンを研磨します。

バフ掛け

研磨砂を使って研磨します。

ルージュ（口紅のような材料）で艶出しします。

完成。

【診療室】調整し、装着。いままでの作業の微妙な誤差を最後に正確なところに収めなければいけません。
調整は専門知識を要します。